☆☆☆☆

�@　「鍵」　．．．　デザインオフィスを営んでいた夫が亡くなった。遺された小銭入れから見知らぬ鍵が見つかり、女性の家の物だと。
�A　「木陰の家」　．．．　父が実家で亡くなったのは２８歳になる３０年前だった。当時妻子のある男性と交際していたのだったが。
�B　「終の伴侶」　．．．　別れた夫の姉から電話があった。また何時ものお金の無心だとばかり思ったが、意外な話が切り出された。
�C　「ソナチネ」　．．．　大富豪の娘のピアノ教師をしていた。軽井沢の別荘に大勢の客を招き、ホームコンサートが行われた。
�D　「千年萬年」　．．．　娘夫婦が二人の孫を連れて来て疲れてしまった。町中で見かけた指圧院に初めて入ってみた。
�E　「交感」　．．．　才能あふれる若き新人女流作家の作品を読み、ファンレターを送った老人に作家からの返事が届いた。
�F　「美代や」　．．．　父の跡を継いで小さな診療所で内科医をしている男。かつてここでお手伝いをしていた女性の死の知らせが。

　死の匂いとエロスの香りに彩られた短編集。表題作に使われている「ソナチネ」と言うのは、ピアノの教材として使われる事が多い曲集です。私は幼稚園の頃からピアノのお稽古をしていまして、バイエルに始まりこの中級者向けの作品も良く弾いていました。ソナチネ（アルバム）と言っても幾つかがあり、ディアベリ、ツェルニー、クレメンティ、クーラウあたりが有名でしょうか。バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトと言った大御所の作品も入っています。さてこの短編作品ですが、どの話にも人の死が関わっています。そして残された人の人生模様が描かれるのですが、死とは正反対にも思われるエロスが描かれます。表題作よりも「千年萬年」と「美代や」の方が印象的でした。前者はマッサージによる性的刺激に目覚めた年老いた女性の話で、後者は少年時代に受けた性的な記憶を蘇らせる中年男性の話。泊りがけの同窓会で夫のいない夜と、少年時代の台風の夜の描写が素晴らしかった。

☆☆☆☆☆

　人とのコミュニケーションに悩みを持つ大学生の金崎恵介は、「あなたの人生、プロデュースします」と言うメールを受け取った。何でもスーパーＡＩである「ＡＩザム（アイザム）」が、世の中のあらゆるデータを収集し予知を行うのだと言う。そして現在行われているサッカーのワールドカップの試合結果を、ことごとく当てて行った。胡散臭い話だったので最初は信じられなかった恵介だったが、人生を変えて見たくてこの申し入れを受ける事にした。

　怪しい電話だとかメールだとかって多いですよね。まあ知らない番号からの電話は取らないですし、メールも迷惑メールのフォルダーに直行させているのであまり気にはなりません。でも何と言っても私は高齢者ですので、何時何らかの被害に遭うか判った物ではありません。さてそんな怪しげなメールを受け取った恵介君は、人付き合いが苦手で友達も恋人もできません。そんな恵介君にとってサッカーの大番狂わせを的中させてしまうＡＩザムは、魅力的に映りました。そして連絡を取った所、ロペと名乗る人物から透明のイヤホンと服のボタンに偽装した超小型の隠しカメラが届きます。ロペの指示によって、恵介君は綾音穂香と言う女の子と出会います。さらに穂香を盗撮しようとした男を捉まえる為に、奈良岡翔と言う社会制裁系配信者と知り合います。うーん、この3人は何処に行くんだろうか、ロペの言葉と恵介が喋る言葉がダブって鬱陶しいな。そんな事を思いながら読みますが、何と言ってもロペは誰なのか何の目的でこんな事をしているのかが最大の疑問です。恵介が穂香と出会った時、お互いの年齢の話はしていないのに何で話が進むのかは疑問でしたが。今の世の中には闇バイト何て不通にあります。この犯人達の様な事を企てる者達が出てこないとも限りません。そう意味で下村敦史さん、凄いです。

☆

　東京都武蔵野市の住宅で火災が発生し、住宅一棟がほぼ全焼した。この火事で、焼け跡から男女３人の遺体が見つかった。静岡県の実家に里帰りしていた警視庁捜査一課の敷島巡査部長は、この事件で呼び戻された。見つかった遺体には刺し傷があったからだった。亡くなったのはこの住居で一人暮らしをしていた志村潔と、その息子夫婦だと思われた。この息子夫婦には小学生の息子がおり、ここにいたはずだったが見つかっていなかった。

　何とか読み終わった、と言うのが率直な感想です。伊岡瞬さんの作品って読み易いと思っていたのですが、この作品は読むのが苦痛でした。何て言うか登場人物が次々入れ替わっていき、落ち着いて読めない感じです。志村家の火災ですが寝たばこの不始末に見えますが、遺体には刺し傷がありました。現場には小ぶりの包丁が落ちており、柄には潔のものらしい血の指紋や掌紋もありました。潔が息子夫婦を殺害し自ら頸動脈を切って家に火をつけたのか。そしているはずの孫は何処に行ったのか。この謎を警察が追うだけだったら読み易かったと思うのですが。カラスと呼ぶ男によって、アオイと言う女性の援護を命じられた樋口透吾。与党・民和党の幹事長である新発田信。政界フィクサーである因幡将明。新発田から依頼を受ける二人組の組合。ここら辺の人物が入れ替わり立ち替わり、自分たちの話を進めていきます。火災現場から消えた子供の航は因幡の息子なのか、その航を拉致したのは新発田なのか。そして新発田の息子は５年前に犯罪をもみ消されたのか。そして警察の方も赤井係長の下で小西・敷島・坂下が動きますが、こちらも一枚岩ではありません。最初に人物相関図が載っていますが、何度もこのページを眺めました。うーん、ここまで複雑にする意味が判りませんでした。

☆☆☆

　数年前、世界各地でありとあらゆる問題が起きた。各国の都市部で大規模停電が発生した。強毒性ウィルスが蔓延した。大きな地震が頻発した。そして高速増殖炉からの放射能漏れで、その恐怖から人の大移動が起きた。これらは人工知能の「天軸」の暴走によって引き起こされた物らしい。それを止めたのは「天軸」を開発した<先生>だと言う。五十九彦と三瑚嬢と蝶八隗の３人は、その先生を見つけると言うミッションを受けた。

　１００ページに満たない絵本ですので、簡単に読めてしまいます。でもその割には内容の重さがジンワリと感じさせられる作品です。冒頭草むらの中を歩く３人は、服にオナモミの実がくっついているのに気付きます。動物に種子を遠くに運んでもらうんだから、自分では動けない植物の知恵だろうねと感心します。そしてキャベツがアオムシに食べられたくない時、匂いを出してアオムシの天敵である蜂を呼ぶと言う話も出てきます。何かこの前に読んだ荻原浩さんの「我らが緑の大地」を思い起こさせる話です。そちらも人工知能ＡＩが絡んだ話でしたが、ホラーと童話ですので読後感は全く違います。こちらの主人公は西遊記を連想させる名前ですが、あまり関係があるとは思えません。それより、この３人は如何にも伊坂幸太郎作品のキャラクターですね。岩の洞から出られなくなった山椒魚と蛙の話とか、原罪を背負わされた人間に理由を与えると言う話、そして人間は物語を求めている。いろいろと考えさせられます。

☆☆☆

　紅屋ではとめ吉に料理を教えるために、代わって下働きの女の子を雇う事になった。やってきたのは歳が九つの、「せい」という小柄な子だった。このおせいの世話はおうめさんがする事になったが、口数の少ない子だった。そんな折、高輪にあるえげれすの公使館を、水戸浪士らが襲撃するという出来事が起こった。このままではえげれすと戦になるのでは、という不安が大きくなっていた。ある日薩摩藩の若侍である遠藤進之介が、おやすを訪ねてきた。

　料理人として１人前になったおやすですが、だからでしょうか料理人としてのおやすが描かれる部分が少なくなってしまった気がします。まず最初の大きな出来事は、おあつさんとの再会です。おあつさんは薩摩から江戸の武家に嫁入りしたものの、夫となられた方が亡くなっています。これからお家の中でどうしていくべきか悩むおあつさんですが、いつか紅屋に泊まっておやすの作る料理を食べる時が来るのでしょうか。そしてもう一つは紅屋の跡取り問題です。旦那様が紅屋の跡取りとして養子に迎えようとしていた男が、胸を患っている事が判り養子縁組の話は白紙に戻ってしまいました。そして旦那様は別の決心をしたのですが、それはおしげを養女にする事でした。信州の保高村の出であるおしげは、紅屋を継ぐ事なんか考えた事もありませんでした。さてそんな事もありましたが、本作の一番の話はおせいの事だったでしょうか。とめ吉を料理人にする事から、下働きとして松戸宿からやってきた９歳の女の子です。実家での継母からの扱いなどによって、集中力が無く不器用な女の子です。でも彼女にはある特別な才能があって、という話です。おせいの才能をこれからどうしていくのか。これらの話は文久元年（１８６１年）の事で、もう数年で明治時代になるんですね。

☆☆

　フリーのイラストレーターをしている想一は、高校からの友人でノンフィクション作家をしているミヤビから頼みを受けた。ミヤビがある人物から頼まれた仕事の手伝いをする事だった。４０年前に六本木にあるビルの屋上で亡くなった人物に関する調査だった。遺体は４０代から６０代にかけての男性で、病死したと思われた。この人物は何者で、何故このビルの屋上にいたのか、そして死因は何だったのか。二人は遺体が見つかった六本木のビルに向かった。

　４０年前にビルの屋上で亡くなっていた男は誰なのか、死因は何だったのか。それを探って行くミステリーだとばかり思っていたのですが、最後は思っても見なかった展開でした。ミヤビが木村伊兵衛と名乗る人物からメールで依頼されたのは、４０年も前の出来事です。警察は事件性が無いとしており、官報では行旅死亡人として扱われていました。４０年も前なのでインターネットにも何にも載っておらず、関係者を手繰るのも難しいと思われました。でも想一とミヤビは遺体が発見された、六本木のローズビルの住人を手掛かりに当時の様子を掴んでいきます。亡くなったのはビルには何の関係も無いホームレスだったのか、それとも何らかの事件が絡んでいるのか。二人はアメリカとソ連のスパイの影を感じながら、当時ビルに住んでいたアメリカ人のデニス、ビルのオーナーでアメリカ在住の岩田と言う男に疑いの目を向けます。大沢在昌さんの作品にしては、派手な展開もスリリングなサスペンスも少ない感じで進みます。そして最後は、タイトルの「リペアラー」と言うのは「修復者」と言う意味なんだそうです。何か結末を期待して読んでいたので、ちょっと残念な気がしてしまいました。

☆☆☆

�@　「料理定年」　．．．　６５歳の誕生日を迎えた妻が突然、「明日から私、＜料理定年＞とさせてもらいますので」と宣言した。
�A　「高額香典」　．．．　街中で葬式看板を見た事から夫の葬儀の香典帳を調べた。すると５０万円もの高額な香典が包まれていた。
�B　「暴走老人」　．．．　９６歳で亡くなったオレのジイちゃんは、いわゆる暴走族だった。当時はカミナリ族と呼ばれていたが。
�C　「自分語り」　．．．　郵便局の発送窓口で他の客の存在を気にしないで、自分の事を延々と話をしている迷惑なバアさん。
�D　「待合室にて」　．．．　病院の待合室で寝たふりをして噂話に耳を傾ける。宝くじ当選、夫の殺害、特殊詐欺の被害など。
�E　「仕返し合戦」　．．．　禁煙の邪魔をした仕返しがくさや焼き。そしてその仕返しには胡椒を焼いて、くしゃみから腰痛悪化。
�F　「白バアと黒バア」　．．．　夏休みには仙台の祖父母の家へ。おばあちゃんは優しかったのだが、ある日違う一面を見てしまった 。
�G　「シニアチャレンジ」　．．．　シニアチャレンジ雇用制度を利用して、出版社の編集部に採用された７０歳の高齢男性。

　「逝きたいなピンピンコロリで明日以降」の続編と言う事なんでしょうか。今回もタイトルの下には主人公の名前と年齢が記載されています。６８歳から９８歳までの８人です。登場人物はいろいろと繋がりが合ったり無かったりもしますが、それぞれ独立した話になっています。まあ私も現在６９歳なので、「うーん、あるよなあ」と思う所は幾つもあります。作者の三浦明博さんは１９５９年５月の生まれですから、現在６５歳で登場人物よりやや若いとは言う物のはほぼ同じ年代です。ですので登場人物の気持ちなどは判り易いのでしょうか。以前重松清さんの「定年ゴジラ」を読んだ時、３５歳の人がよくこんな話を書けるなあと驚きました。本作ではそれとは違う安心感が感じられました。読んでいて一番感心したのは次の一文です。「一緒にいる男女が気を使わずリラックスできるのは、嫌いなものが同じ方がいい。好きなものより、嫌いなもの」。確かに同じものが好きだと言う関係より、同じものが嫌いと言う方がしっくりくるかも知れません。ちなみに私と妻Ｍですが、好きなものはほとんど違いますが、嫌いなものは同じ様な気がします。

☆☆☆

　医療機器販売大手の子会社で営業事務をしていた２８歳の関根菜生は、営業への異動の内示を受けた。性格的に営業には向いていない菜生は、パワハラ上司の下では上手く仕事ができるはずも無かった。子供の頃からじんま疹が出易い体質だったが、ここにきて一層酷くなってしまった。病院に罹ってもたらい回しにされ、挙げ句の果てに「病院ショッピング」等と言われる始末。そんな中最後に辿り着いたのは、イケメンの小野田玖真が院長を務める「んん診療所」だった。

　主人公の菜生は慣れない営業職に異動させられ、ハラスメント上司に遭ってじんま疹悩まされます。夢も資格もない、恋人もいない２８歳の菜生はいろいろな病院にかかるのですがアレルギーの検査では異常が無く、「特発性じんま疹」と診断されています。まあ診断がなされて薬を貰うのですが、一向に良くなる気配はありません。挙句の果てに「病院ショッピング」等と言われてしまいます。この言葉は知りませんでしたが、これは「ドクターショッピング」とも言われ、診断や治療に納得がいかずに複数の医療機関を次々と変えて受診することを言うんだそうです。まあそれはともかく杉並区の西荻窪にある「んん診療所」を訪れた菜生は、痴情のもつれらしきトラブルを抱えた小野田院長にびっくり。まったく病院らしくなく院長も患者と世間話をしたり、食事を出したりとまともな診療をしていません。作者の藤山素心（ふじやま・もとみ）さんは、広島生まれ東京在住の作家さんで医師でもあるとの事。まあ医師であり作家でもありと言えば、知念実希人さんとか海堂尊さんとかが思い浮かびます。医療に詳しい作品が多いのですが、本作は医療と言うよりも食事に関する話の方が多いです。子連れの患者と言うか常連客の家庭の問題とか、菜生の実家における父親の問題とかも出てきますが、全体的にはホンワカした話です。まあこんな診療所があってもいいかも知れません。

☆☆☆☆☆

�@　「花のたましい」　．．．　偶然に再会した小学校時代の同級生から、心臓の病で入院している女の子のメイクを頼まれた。
�A　「百舌鳥乃宮十六夜詣」　．．．　大人からは行ってはいけないと言われていたナメクジ地蔵の先で、奇妙な女の子と出会った。
�B　「アネキ台風」　．．．　母親の違う弟が白血病を発症。骨髄移植の必要があり、自分達を嫌っている姉に助けを求めるしか。
�C　「初恋忌」　．．．　癌を患った私は、かつて４年ほど過ごした彦根の町を娘と訪れた。ここで一人の女性から声を掛けられた。

　直木賞を受賞した「花まんま」のスピンオフ的な短編集だと言う事です。「花まんま」と言えば今年４月に映画公開され、主人公の加藤フミ子役は有村架純さん（♡）が演じているんですね。お好み焼き屋だとか山田製作所などを通じて「花まんま」との繋がりはありますが、物語としては独立しています。ですので前作を読んでいなくても問題は無いのですが、最後の「初恋忌」は特に関連が深いので、もし前作を読んでいなかったら是非読んでからにした方がいいと思います。大阪を舞台にちょっと不思議な話が描かれます。そしてそれは何処かもの悲しさと言うか切なさを感じさせる話です。朱川湊人さんのノスタルジックを感じさせるファンタジー作品は、どれも好きです。その中でも特に素晴らしいのは、「都市伝説セピア」に収録された「昨日公園」でしょうか。今まで読んだ短編作品の中でも一二を争う作品だと思っています。それと昭和３０年代ら４０年代の東京を舞台にした、「かたみ歌」なんかも大好きな作品です。この時期と言うのは私が子供の頃を過ごした時代に重なるからなんでしょうね。本作では表題作も良かったのですが、何処か人生の終わりを感じさせる「初恋忌」が良かったです。

☆☆☆☆

　池袋で探偵事務所を開くも仕事の依頼が少なく、事務所の賃料の支払いにも窮している前沢恵子。そんな彼女の元を、以前交際のあった男が訪ねてきた。知り合いの資産家が１５年前に一人息子を亡くしたが、交際していた女性との間に孫が出来ていたのではないか。そんな依頼を紹介してくれた。その交際相手の女性は中沢ゆかりと言い、ある新興宗教に入信していたという。調べてみると同じく１５年前に、教団幹部が集団自殺を遂げていた事が判った。

　ユビキタス（Ubiquitous）と言うのはもともと、「いつでもどこでも存在する」と言う偏在を表す言葉です。でも最近はＩＴ分野で使われる事が多く、コンピューターやネットワークが何時でも何処でも使えると言う、社会や情報システムのあり方を指す様になっています。最初の方で露木が恵子に語る言葉が印象的です。「ユビキタスと聞いて連想するのは植物なのは、地球生命全重量の９９．７％を占めるのは植物だから」。さて鈴木光司さんの新たなホラー作品ですが、プロローグで南極観測隊に参加していた自衛隊員が、南極の氷を持ち帰る所から始まります。南極大陸は最大５千ｍ近くの厚みを持つ氷床で覆われています。研究の為にドリルでこの氷を掘り進め、人類が誕生する以前の情報を得ようとしています。わずか５ページ程ですが、これから起こる事を色々考えさせられる冒頭部分です。そして孫探しの依頼を受けた探偵の前沢恵子、妻を失い一人娘を義理の両親に育てて貰っていた露木愼也の話が中心となって進みます。１５年前に起こった新興宗教の幹部が、集団自殺したと思われていた事件の真相は。同じく１５年前に病気で亡くなった露木の後輩である敏弘が調査していた、ヴォイニッチ・マニュスクリプトとは何なのか。基本的にこの作品はバイオ・ホラーなのですが、あまり怖さが感じられませんでした。これは科学的な難しい話が多過ぎるのと、登場人物に魅力があまり感じられないのが原因でしょうか。それにしても荻原浩さんの「我らが緑の大地」とか、伊坂幸太郎さんの「楽園の楽園」とか、植物って恐いんですね。話に出て来る秩父の浦山ダムとかさくら湖には、何度か行った事あります。

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　天医会総合病院の院長である天久大鷲が、手術を担当した都議会議員の八千代和子。小鳥遊も助手としてこの手術に立ち会っていたが、手術は上手く終わったもののその後病状が悪化した。そして彼女から「大鷲から殺されかけている、すぐに助けてくれ」との通報が、田無署の方に入った。彼女は病院から姿を眩ましてしまい、その後近くの公園で遺体となって発見された。鷹央らは叔父の容疑を晴らし、病院の危機を救う事ができるのか。

　天久鷹央と小鳥遊優による、シリーズの１９作目です。このシリーズは２０２５年４月からテレビ朝日でドラマ化され放映されています。天久鷹央を演じているのは橋本環奈さんなのですが、私はこのテレビ・ドラマを観ておりません。まあ最初にこの配役を聞いた時には「エッ！」と思いましたが、意外と合っている様な気がします。少なくとも環奈さん以外で誰がいいのか聞かれても、答える事ができません。まあそれはさておき本作ですが、鷹央にとって犬猿の仲であり不倶戴天の敵である院長の天久大鷲を救う話です。何で大鷲を救うのかと言うと、院長である大鷲が院長を辞めてしまったら副院長である鷹央が院長になってしまうからです。今回の相手は詐欺師の様な医者なのですが、普通の治療を行うのではなく鏡面反響療法でどんな病気も治してしまうんだそうです。鷹央らにとっては胡散臭いドクターとしか思えませんが、その治療を受けている患者からするとほとんど信仰の対象の様になっています。そしてその医師である水鏡も殺害され、大鷲が有力な容疑者となってしまいます。まあ今回も鷹央の卓越した推理力と医学的な知識によって、全てが綺麗に解決します。殺人事件の謎、犯人の動機、水鏡の治療の謎等など、凄くスッキリと解かれるので、読後感が凄くいいです。大鷲や本当の詐欺師である杠阿麻音の印象も良かったし。