初めて山に登る

　人間何をするにしても最初と言う物はあります。と言うか何かをするのに、まずは最初から入るんです。最初から出来る物は何もなく、何らかの形で初体験を迎えるんだと思います。その時初めてする事に対して的確なアドバイスをくれたり、色々と助けてくれたりする人がいれば、そのものに入り易いでしょう。これは趣味でも仕事でも日常生活のちょっとしたことでも同じです。今回４５歳にして初めて山登りをしようと思ったＭさんと言う女性に関して書いてみたいと思います。それまで彼女は山に全く登った事が無かったそうです。何でいきなり山に登りたくなったのかはイマイチ良く判りませんが、私と友人のＢちゃんが彼女の先生役に抜擢されました。その顛末を記します。まずは今までやった事の無い山登りを始めようとする、Ｍさんの勇気に敬意を表したいと思います。

　先日大学時代のワンゲル仲間のＹさんから、かつて勤務していた時の同僚が、山登りを始めたいと言い出した事を聞きました。既に山登りを辞めていたＹさんは、今でも山登りを続けている私と私の友人Ｂちゃんに、何とか力になってやれないかと相談を持ち掛けました。相手はＭさんと言う４５歳の女性だそうですが、今まで一度も山に登った事が無いそうです。初めてやった事の無い事を始めるのは、結構ハードルが高い事だと思います。若い頃ならまだしも、例えば私がサーフィンや海釣りやスキューバダイビングを始めるようなものです。知り合いに知識のある先生役がいればいいのですが、いなかったら何から手に付けていいのか全く判らないだろうと思います。まあ私としても同じ山の仲間が増えるのは歓迎する事なので、その依頼を喜んで受ける事に致しました。

　　　

　その見知らぬ相手が何で登山をしようと思い始めたのか、どんな山に登りたいのか判らないまま、顔合わせと基本的な山道具選びに同行する事にしました。相手の勤務地や住居を考えて、まず登山用品を購入する新宿のモンベルへ。初めて逢って普通にお付き合いができる人だと思えたのは良かったです。取り敢えずここで登山靴、靴下、タイツ、スパッツ、ショートズボン、レインウェア、ザックを購入。モンベルの場合。会員になれば購入した荷物は無料で郵送してくれるのはありがたいですね。その後新宿の居酒屋さんでいろいろと山の話をさせて頂きました。特に何処の山に登りたいと言う事は無いようですが、基本的に一人でどんな山でも歩けるようにしてあげることが必要だなと感じました。

　私もＢちゃんも６０代です。いつまでこのまま山登りを続けていけるとは思っていません。悲しい事ですけれど、このまま今の登山を続けられるのはあと１０年もないでしょう。そんな中で私たちよりも１５歳以上若いＭさんには、少しでも早く一人で山登りを楽しむすべを教えてあげなくてはいけないんです。山道具は何とでもなります。最低限の装備さえ揃えれば、大抵の山に登ることはできます、登る山の決め方、登山計画の立て方、基本的な山の登り方、宿泊する山小屋での行動の仕方、山の中での食事の作り方、山行中の判断の仕方、天気図の読み方、などを教えて上げれば、日本中どこの山でも通用する事だとは思います。  

　　　


新宿南口のモンベル店


大山の表参道を登るＭさん（左）

 　ところである程度の年になって、今までやった事の無い新たな事に取り組むって大変な事ですよね。山登りもそうですが、楽器を始める、新たなスポーツに挑戦する、日本語以外の言語を取得するなど等幾つもありますよね。私にはこれから新しい事にチャレンジすると言うパワーはありません。まあ私よりも１５歳以上若いＭさんだからこそできる事なのかも知れません。そして最初に選んだのは神奈川県大山のハイキングコース。山ガール姿に身を包んだＭさん、私とＢちゃんに頼んだ立場のＹさんご夫妻、そして私とＢちゃんと言う、変則的な５人パーティーで大山に登りました。ケーブルカーは使用しないで、ちゃんと大山山頂まで登って降りてきました。

　まあコースが簡単なハイキングコースだったんで、簡単に登って降りてこられました。地図の見方だとか、歩き方だとか、休憩の取り方だとか基本的な事は話しました。でもこれだけで後は一人で登ってね、と言う状況ではないですよね。まあ２〜３年は一緒にいろいろなタイプの山を登って、山登りを自分の物にして欲しいです。そして２回目の山登りは翌週の雲取山。もともとこの山にはＢちゃんと行こうと話してたんですがＭさんも来ると言うので一緒に行きました。はっきり言ってＭさん強いです。初山行２回目で雲取山はどうかと思ったのですが、簡単にクリアしてしまいました。これなら今後、どんな山に行っても大丈夫かなと思います。

　　　

　そうしたらもう一つの問題点が生じました。Ｍさんの娘さん（１５歳の女子高生ですよ！）も一緒に行きたいとの事。もうこうなりゃ相手が誰でもいいです。取り敢えず今は冬の季節で行ける山の範囲は制限されるので、４月以降本格的な山へ一緒に行こうと思っています。とにかく今の自分と同じ位の体力も知識も経験も早急に積んでもらわないといけないんで大変です、３月に丹沢主稜の縦走、５月に谷川岳を考えていますが、夏には北か南のアルプスに行きたいと思っています。今から２，３年の間に山の基礎知識を覚えて貰って、日本中どこの山でも自分たちだけで登れる様になって欲しいと思っています。まあそれはいいのですが、６１歳のオッサンが、１５歳ＪＫとどういう話をすればいいのか皆目見当がつきません。それが一番の問題かも知れません。

　ちなみに私が山を始めたのは、父親が山好きで子供の頃良く山に連れて行って貰ったからです。あまり覚えてはいないのですが、奥武蔵の伊豆ヶ岳に登ったのは良く覚えています。そして中学生の頃友人と登った奥多摩の大岳山が印象的でした。大した山の知識もなく奥多摩から大岳山に登り、途中で日が暮れてしまい散々な思いをして五日市に降りてきました。そして高校生になり山のクラブに入り、夏合宿で八ヶ岳に登った事で山に嵌りました。そして大学でも山のクラブに入り、今までずっと山登りを続けています。まあ３０代４０代の頃は仕事が忙しく、ほとんど山からは遠ざかっていましたが。そう言えば私がスノーボードを始めたのはＭさんと同じく４５歳の頃でしたっけ。その時は先生役いませんでした。でもこれから私が何か新しい事始めるのは、ちょっと無理っぽいですね。